コスメルの海の見えるホテルの部屋から

Toru Sasaki's Gallery



 

  コスメルの海の見えるホテルの部屋から

海と空の180度の視野の中で、
一番遠くが群青、次がコバルト、 その次が緑と、それぞれが横にどこまでも伸びる海。
朝起きてカーテンをサーと引いたとき、その色のコントラストが一番際立つ.
海の上の雲まで美しい。白い雲に陰影がやさしく トーンが幾重にも形を作る。
空気が透明度なためか 雲の細かな姿が、幾つもの調子の薄墨色の影を作る。

このホテルの一室からまずコバルトに輝く海が見える。
次に、大型豪華客船が少し沖の桟橋に白く見える。
そして目の前にダイバーが乗込む小船が次々と入る小さな桟橋が見える。

沖の大型客船の喫水に近い穴から、蟻の様に人が出てくるのが見える。
昼間は停泊していて、夕方になると何時の間にか桟橋を離れている。
夜の間に次の目的地にいく.朝また別の大型客船が停泊している.

ホテルの目の前に小さな桟橋にはひっきりなしに、ダイバー相手の船が入ってくる。
その度に酸素タンクを荷卸し運ぶカチン、ガちゃんという金属音が 朝空ける前から、夕暗くなるまでする。
メキシコ人たちが重いタンクを引きずる。 大体一日に参十隻位の船が出入りする。

一隻に4人乗り組むとして一人ボンベを二本使うとすれば掛け算で 二百四十本のボンベが積み込まれる。
だからボンベを運び込む音がいつもする. 日が丸く大きく赤くなり沈む.空一面の青い薄墨の中に光がこもっている。
そのとき海は銀色にさざめき、さらにいぶし銀の板に変わる. 海の一日の色はこれで最後になる。