ニュージランドの旅

   大自然の中のデズニ-ランドのようなニュージランド

   そんな旅には面白くもないところのはずなのに、どこの町もホテルは空室ありませんという看板が並んでいた。どこも町ぐるみ満員御礼なのである。 どの町もバスから大勢の旅行者が降りてくると、バス停の前に必ずある観光案内所に列をなして並ぶ。先ずはその町で遊ぶことの予約しているのである。みんながみんな、まるで憑かれたように、旅の目的はその他はないように、誰もが町で用意された遊びのために並ぶのだ。

   本当にニュージランドは大自然のなかのデズニ-ランドだ。

   そんな遊びのメニューを紹介すると。空は観光飛行・気球・パラグライダー・セービング。陸は四輪駆動、乗馬、MTB、ガイドつき山登り。川はラフテング、カヤック、ジェットボート、ガイド付きつり。海は鯨見物・カヤック。観光飛行は別として、大体、半日遊んでくれて三千円、一日で五千円程度だ。すべて初心者でも参加できるメニューが用意されている。

   本当にニュージランドは大自然のなかのデズニ-ランドだ。

   ジェットボートというのに参加した。まるでジェットコースターである。川底の砂利に船底をこすりながら、超高速で右左と鋭いカーブをきれば、船は岩や岸にぶつかる寸前。みなの声が絶望的にこだまする。体が川に投げ出されそうになる。船が跳ね上げる水でびしょびしょになる。どこにも見られないような、透明な水の色と岸辺の野性の美を横目に見ながら一時間あまり。終わった後は十人ほどの同乗者はすっかり家族のような打ち解けよう。ひっくり返ってももともと飲めるような水だし、わにが現われる心配も無い。

   本当にニュージランドは大自然のなかのデズニ-ランドだ。

   海カヤックもやってみた、初めてというのに、おしゃもじのような櫂を、大して力も入れないで、みぎ、ひだりふりまわしていると、快適に進んでいく。二人乗りでガイドが後ろで上手くあやつってくれていることもある。透明で様々に変わる水の色を楽しめる。ガイドはひっきりなしに話し掛けてくる。お笑い芸人のような話し上手で聞いているだけで楽しい。

   本当にニュージランドは大自然のなかのデズニ-ランドだ。

   ガイド付きMTBに参加しようかと考えていたとき、ポスターを見ていたら、MTBに乗った姿が、青い湖を高いところから写した写真の上に描かれているのをみて気が着いた。これらの野外スポーツのかなり;四輪駆動、MTB、乗馬、パラグライダー、スキーなど;に共通しているのは、大自然が箱庭のように見える山の頂きに行き、次にこの箱庭に眞ッ逆さまに落ちていく筋立てになっていることだ。走ればスリルと興奮、休めば箱庭のような青い湖の景観だ。

   本当にニュージランドは大自然のなかのデズニ-ランドだ。

   こんな遊びはニュージランドのように、広大で何もない美しいだけの国だからできる。ひっくり返ったりする川や原野に、わにもトカゲもイグアナもさそりもいないからできる。ざんぶりかぶる水も、ひっくり返って飲む水も、どこまでも透明でおいしそうに見えるから、みんなが参加できる。

   黄色か赤のジャケットを着て、弧を描き大空に舞うすがたは、美しい白いシーツに極彩色で絵を描くようなものだ。 いくつもの列をなしてチケットを買っている老若男女を見るにつけ大自然の中のデズニ-ランドと思う。大自然を舞台にしたスリルと興奮の遊び場なのだ。

   本当にニュージランドは大自然のなかのデズニ-ランドだ。

   静かな青い湖のほとりで白昼の光のなかでぼんやりしていたとき、何時間かおきに、観光フライトのセスナが飛行機がマウントクックに向って飛び立っていった。そんなとき、次に来たときは、きっと、湖のほとりが飛行機発着所で一杯になり、十分おきにセスナの音がしていて、湖の静かな憩いも少ないと思った。

   それにしても、ニュージランドが白いシーツのように美しいだけで、何も無いことを考え、それを補うデズニ-ランド顔負けのシステムを作ったことに感心した。