パタゴニヤで見た黒襟白鳥のように、
首から上だけ黒くなって、十二月
二十五日に五十日間の旅から戻りました。

美しい死の褥のように見える山並みは、
それだけでなく見る光景すべてが、
これが世の果てと形容するに十分な
寒々とした異様だが美しいものでした。




途中はいいから地の果ての、ここにだけに来ようと、
はじめの一ヶ月は思いましたが
あまりに、強い風の押し、引き、揉み、叩きの連続に
美しいだけの世界は、二ヶ月目には、
もう来なくても良いとなりました。


二ヶ月もの間、美しいだけの世界で、
人がいない寂しさに、疲れました。何が美しいって
山は死の褥のように、黒く白く静寂で絶望に満ち、



荒野は乾き切って、生きるにはその糧少なく、
途方にもなく,空ばかりが 晴、雨、雪、雷の
いくつも色で世界が、一度にいくつも表現されて

しかし、この荒野に高原の花が何百キロも限りなく咲き乱れ、
黒襟白鳥、フラミンゴ、カイケンなど水鳥が一生懸命で
ニャンドー、ラマ、ウサギ、ハリネズミなどが走る楽園も見ました

更には、単独ハイキングを六回ほど試みて、
人影のない 地の果ての美しさに陶酔しつつも、
断崖絶壁と、風との戦い、 道を見失うなどは、
怖い、半パニックの熱い興奮体験でした。



山上まで引っ張り上げて打ち続けたパソコンが
突然電源が入らなくなって、
四十日分の詳細な パタゴニヤの描写が
消失したのが、心残りでした。