Toru Sasaki‘s Gallery


「」

 

アルヘンモという漁港まで歩く

魚介を食べさせる二坪ほどの小さな店が

四十軒ほど漁港に落ちそうな位置に固まりあって

 

客が通ればそれぞれの店先で、

ドラム缶のような蒸し器のふたを、あけて

白い吹きだす湯気のなかをみせる。大きな貝類が見える。

 

女たちの誘いの華やかさ、もうもうたる湯気。

大きな白い貝、黒いムール貝、肉の塊、ソーセージ、

ジャガイモなどを蒸している。

蒸し上げる湯にこれらの貝類の汁がでてきて、

これがスープとして出て来る。

 

海の男の激しく消耗する労働のための、

手間のかかぬ素朴な海辺の生活そのものの料理と思えた。

一つ注文。一つずつが大きく食べ着れない分量。

 

夏でなく冬であればこの湯気ははるかにもうもうとして、

もの凄く、暖かく見えて、冬の海に冷えた漁師たちの

生きる心のよすがでもあるだろう。

 

食事のビールが程よく廻って、鮭の燻製の山をみながら

歩く。相変わらず店の呼び込みが激しい。

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