タスマニアの自転車旅行環境           2006/01/18

 

   帰国後しばらくは神経で胃が痛かったから、自転車の初心者には厳しすぎるコースであった。タスマニアをサイクリングの場所として選んだのは、サイクリングのガイドブック(Lonely planet  Cycling  AUSTRALIA )に“オーストラリアで一番のお薦めはタスマニアだ。一度やってご覧”と書かれていたことだ。

     信頼しているLonely planet ではあるが、ガイドブックとしては記述が足りなかった。自分の地図の読みも足りなかった。旅はいつも予想外だ。しかし、終わってみれば楽しい。
 

1、           自動車のあるハイウエイを走る

   ほとんどハイウエイ(高速道路)を走る。町から町に行くのに主幹線であるハイウエイしかない。セカンダリーロードというものが無いのだ。ひたすらハイウエイを走らざるを得ない。狭くて平坦なところがない島には道路一本しか走る余裕がない。

自動車社会であるのですこし大きな町の出入り口は、東京の幹線と余り変わらない。殺伐としたガラスの破片が道路を覆ったところを、騒音と振動、さらには高速で走る自動車の風を感じて走るのは、緊張と恐怖の走行であった。

 それでも、田舎に行ってしまえば状況は変わり、自動車は余り走ってはいないが、欧米人の乗る観光のレンターカーが高速で通り過ぎる。対向車線を使って離れて走るから、問題が無いものの、慣れないから恐い。

    タスマニアは木材の産地であるらしく、大きなトラックが巨大な丸太を運んで、時折 道路巾一杯を使って通り過ぎる。おまけにタスマニアの風は強い。、自動車は強く風を押して走ってくる。その風圧が自転車に向かう。ふわっ、と押される。思わず手がハンドルから手が外れて、ぐしゃっと潰れる予感が走る。

 

 

2、           坂道の連なるハイウエイを走る。

    タスマニアは島である。島というものは海底に出来た大きな山の先端部分が出ているものだ。だから、山の頂上近辺を走行するようなものだ。海岸沿いに走るとしても、まるで山中に敷かれたハイウエイを走るようなものだ。

    普段は多摩川沿いの平坦な自転車道路を、自転車重量18キロだけで走っている自分とすれば、坂が来れば、荷物を入れて重量35キロはする自転車を押すことになる。押していれば時速4、5キロにしかならない。坂道でも漕げば8キロくらいは出るから、焦って漕いだりするが、長くは続かない。

    押して歩いていると、観光客の自動車が止まり“アーユー オーケー”と声がかかる。“オーケー”と首を縦に振って答える。黙ってそのまま自動車が行く。大抵女性が三人ほど乗っている。ご親切に“アーユー オーケー”が三度くらい繰り返されるときがある。

    この坂道も筋力・持久力さえあれば快適になりうるのは分かってきた。坂道も自転車の変速機を上手く操作すれば、それほど大きな負担でもない。こうして上がりが出来てしまえば、見下ろす景観を高速で飛ばせる下りがある。漕がないでもいい体を休めることの出来る疲れを癒やす時間だ。残念ながら、自分はこのときはブレーキをかけていくことになる。もったいない事をするが、高速で下るとまだ途中でぐしゃりと行く恐怖がある。

 

3、           風が強い日が多い。

   一週間のうち三日は風が強かった。南極の高気圧から流れ出る風と思ひきや、いつも北風だった。この情報をガイドブックというものは書いておくべきだ。自分の計画で、南から北へと向かっていたが、知っていたらば北から南に向かって計画を立てていた。

   部屋にいても朝から風が強い日と分かる日があって、その日は休んでいた。風邪が強いかもしれないと思っても、何日もぶらぶらしている訳にも行かないから、出かけると大変だ。風に向かっては、自分の体がヨットの帆のような役目をして、風に押されるから、自転車は立ち止ったりして、なかなか進まない。体をかがめて小さくして、うつむき足と背中と手に力を込めてひたすら、自分の内に向かって漕ぐ忍耐が要る。

    この旅で気になったのは、持って行った自転車が不安定なことだ。ハンドルがドロップハンドルであることと、27インチの車輪で腰高なこと。マウンテンバイクをみんな乗っている。何時か自転車屋がマウンテンバイクのほうが安定がいいといっていた。

 

4、           天候

    気温はガイドブックには10℃から20℃とあった。日本の11月の気温と思い、羽毛のジャンパーを持って行った。

    旅の始めにRICHMONDのBBのおばさんに“羽毛のジャンバーを持ってきたんだけど、どうだろう?”と聞いてみた。長袖のシャツを暑そうに着ている私を見て“寒いときが続くときがあるのよ。正解ね、でも、日が射すと25℃にいくからTシャツが必要なのよ。”といった。あとで、土産物屋でTシャツを買ったが、その後寒い日が続き役立たなかった。日本以外は温度差が大体大きいから、旅行では、いつもセータとTシャツを持っておくのだが。

 こんな温度の気候でも、ここでは夏と呼んで、町の表情も晴れやかだ。なぜなら、木々が明るい緑で日本の夏の姿だからだ。と、いっても、曇れば日本の11月の気候になり、人々の姿が町から影を潜める。人々が東京の冬の姿で背を丸めて歩くわびしい町になる。

 

5、           途中に自転車屋はありません。

     HOBARTの目抜き通りに大きな自転車屋があった。日本にはない数の自転車の展示、五、六人もの従業員が控えていた。自分は自転車の修理の為、何回も出たり入ったりしていた。

 ヨーロッパと同じく腕は良く、安いという印象だ。念のためにそこの親爺に確かめたところ、自分がサイクリングに行く東海岸には自転車屋はないそうだ。“それじゃー、毎回戻ってこないといけないのか?”と口に出る。

 自転車の部品の名前とホテルの名前とクレジット番号をこの自転車屋に電話すれば、バスが届けるようになっていると、答えた。それもHOBART SWANSEAという町の間だけで、それ以上はバスが行っていない関係で駄目とのこと。話の前提は、自分で部品交換できること。

 実際に東海岸に行って見ると、そこには町らしい町はない。ガイドブックが宿を案内している町も、宿屋があるだけに見えるところが多かった。自転車屋がないのも無理もない。

 

 

6、           アコモデーション

    タスマニアは観光客が自動車で廻っているところである。小奇麗なモテルが要所要所にある。100$AD出せば、海が見える綺麗なモテルに入れる。BBはこのモテル値段が張るが、クラシックな英国調の邸宅に泊まれる。

    この値段はメルボルン近郊で泊まったときよりも、値段がかなり高い。余談だが自分が愛用しているNEWBALANCEのスニーカが日本の倍はする値札が貼られている。タスマニアは物価が高く感じるところだ。