Toru Sasaki`s Gallery




グアナハトの町に入る。

午後、バスに揺られ、サンミグエルデアジェンデからグアナハトへ着く。
人の手で岩を削り、岩を積み上げ、年代を重ねた地下道を、タクシーは迷走する。
この地下道を数百年に渡り銀の鉱石を運んだ大勢の原住民の姿が目に浮かぶ。
闇の中を、あちらに走り、こっちに走る内に、心は異次元へ入り込む。

やがて地上に上がると、曲がりこんだ坂の中程に、荘厳な中世の町が現れる。
ホテルを求めて歩く。町の中心にうなぎの寝床のような、一本の道の両脇に、
建物は高さや形や色が不同な、年代物の建築が、偉観を呈して、道は延々と続く
建物はよく見れば豪奢で絢爛だ。しかし、泥の中に埋もれているように見える。

グアナハトの町

道は古い建物が影を落として暗い。大勢の貧しい人々が肩を寄せ合いこの道を歩く。
原住民の人々に目を向ける。茶色の肌、黒い髪、渋い極彩色の服。
道を歩くとこの人々との距離がとても近い。木陰で原住民が民芸品を売っている。
ベンチに座ると、そっと冷たい手が膝を触る。眉毛の先まで垢に塗れた子供の物乞。

町の中心のユニオン公園に出て来る。建物は威風堂々、華麗といってよい。
ギリシャの優雅な建築とも思える歌劇場。
グアナハトの宝石とも思える建物がありのままに光っている場所はここしかない。
このユニオン公園には、華麗な建物を際立たせる光と緑陰と音楽がある。

ユニオン公園の前の歌劇場
ユニオン公園は良い。しかし、他の場所は、わたしは落ち着かない。
グアナハトの町は、人が多いだけ活気がある。生活感がある。人種が交差している。
この町の人は、この世界遺産都市にもっと観光客を呼びたいという。
しかし、 建物を磨いて、貧しい人の数を減らさないと、世界の人の集まる憩いはない。



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